川合のこだわり経営実務
-
◇ 後継者づくりをめぐる諸問題
<会社には後継者が必要>
高齢になったから経営ができないということは決してありませんが、体力が落ちたり柔軟性に欠けて新しいことが吸収できにくくなるなど、限界というものがあります。
また、企業の最高実力者である社長に「やめたらどうか」と言える人はまずいないのですから、いつ社長の椅子を譲るかを決めるのは社長自身なのです。これはきわめて重要であり、なかなかむずかしい務めです。
譲りたくても、適当な人間がいないというのが現実だということもあります。しかし、後継者を育てるのも社長の責任であり、後継者がいないということは、その仕事を怠ったということでもあるのです。
<決断の機会と役割分掌の明確化>
経営者教育と従業員教育との違いは、どのようにして「決断」の機会を与えるかに最大のポイントがあります。
もし後継者候補を定めたら、しばしば決断の機会を与えるべきでしょう。まかせることは、忍耐とリスクを伴う大変なことですが、社長が決断すべきことのすべてが、経営をただちに左右するものばかりではありません。まかせられることは、必ずあるはずです。まかせたら、途中で口を出さないことも大切ですが、ただ放っておけばよいというのではなく、決断の未熟さから出た失敗やトラブルを社長がフォローすることが肝要です。そしてどこが未熟で、なぜそれが失敗したのかをフォローの後に教え、成功したときも同様で、よくやったとほめるとともに、なぜ成功したかを社長の立場で話します。つまり、評価をきちんとくだすわけです。正当な評価がなければ、たとえ成功しても能力は高まりません。(そのためには「役割分掌」を示しておくこと)
この際、重要なことは総合的な見地を示すこと、つまり、収益的なことや取引先への影響、また従業員の士気にあたえる影響はどうか等をデータと観察結果を基に示すのです。「視野」や「物事の見方」を決断した事例に元づいて教えるのが重要です。
そのためにも、何のために仕事をしているのか? その目標に向かって、それぞれの部門の使命、役職員の役割分掌(経営者が求めているもの・求められているもの)を明確にし、達成度合い・進捗状況を互いに確認しあうことがとても大切なことといえます。
ここのところを整備するだけで、仕事への取り組み姿勢や人材育成に大きな効果が見られるものと考えます。従業員に自信を持たせる教育が必要です。「自信を持たせる」とは、他の企業とちがう特徴や、商品・技術・サービスの異なる点を、まず従業員に認識・自覚させることなのです。
【専門家紹介】
川合 雅之
事業再生士 、1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / (株)FPプロジェクトワン
株式会社FPプロジェクトワンは、昨今の総合的なコンサルティング(ワンストップサービス)ニーズの高まりに応えるため、平成19年1月主な業務として、新規創業・起業支援、事業再生・改善計画書の策定支援、資金繰り支援、相続・事業継承支援(M&A含む)などの“総合コンサル会社”として設立しました。